あぷラビ過去ログ 第2集
#21 見切発車 あぷラビ 『ご自由にお取りください』
「うひゃぁーっ」
突然雨が降り出し、近くのビルの入り口に駆け込むさつき
「傘、もってくれば良かった・・」
ふと、そのビルの入り口に無料配布の求人誌を積み上げるためのラックと、傘立が置いてあるのに気付くさつき
「・・・・・・・むぅ」
ゴリゴリと傘立を移動し、ラックの前までもっていく
「これでよしv」
さつきは満足そうに汗を拭う動作をし、傘立から傘を拝借して去っていった
#22 見切発車 あぷラビ 実は、死んでるんです
「ねぇねぇサマラちゃん、サマラちゃんって普段なに食べてるの?」
アプリンが手をばたばたさせながらサマラビットに問う
「んー・・・・」
少々考え込み
「豚味噌丼とか、ナスとかカレーとか焼きそばとか・・・ああ、パスタも」
指で数えるしぐさをしつつ答えるサマラビット
「アプちゃんはどうなの?」
なんとなくアプリンに聞いてみるサマラビット
「僕はご飯食べないよー。お化けだもん」
アプリンが軽く言い放つ
「・・・・・・((゜Д゜;;)」
声にならない恐怖の顔でゆがむサマラビット
「そんなに怯えないでよぉサマラちゃん」
ばつの悪そうにするアプリン
「まぁ、なんだな―――」言葉を慎重に選び答えるサマラビット
「食べ物の恨みって恐ろしいってことナノネ・・・」
#23 見切発車 あぷラビ それは些細なこと
「コンピュータ壊れたから修理してるんだヨ」
なるみが活き活きとした表情を浮かべつつパソコンの筐体を解体ている
「へぇー。よくわかるね。構造とか」
さつきが感心した様子でそれを眺める
「簡単にメンテナンス出来るように安心設計になってるんダヨ。最近のパソコンは」
トゲトゲがいっぱいあるCPUを慎重に設置し、油みたいなのを塗りファンを装着しつつなるみ
「まぁ、これは私のじゃなくて課長のなんだけどね・・任されちゃって」
なるみがしゃべりつつ、筐体を嵌め、元のパソコンの形に戻る
「・・・さつき、ずっと眺めてないで仕事しようよーw」
戒めの意がこもった目線でなるみはさつきを見つめる
「ねぇ、これすっごく気になるんだけど、何?」
さつきの指の先には何かのネジに何か折れた形跡のあるピン
「――――よくあることよ」
腕を使い一瞬にして拭い去りゴミ箱に捨てつつなるみは軽く答えた
#24 見切発車 あぷラビ 弔
「・・・やぁ。元気にしてたかい? 私は相変わらずだよ」
日差しが高くなってくる午前中。晴れ渡った空。なるみが桶を片手に中腰になり石に向かう
「相変わらず私とさつきはあんな調子で何とか仕事やってるよ。色々やっちゃってるけどね」
苦笑を浮かべるなるみ
「もう・・・・5年になるんだね・・・ホント。」
視線が空を舞い、流れるやさしい風に髪をなびかせつつなるみ
「さつき――今じゃしっかりと立ち直ってピンピンしちゃってるよ。もうちょっと落ち着きが欲しいぐらいダヨ」
日差しが高くなり、暑くなってくる。それに気を止める様子もないなるみ
「もう一度、君と馬鹿騒ぎしたかったよ。」
#25 見切発車 あぷラビ 私たちの枕
「ああ、雨が降り出したよー。サマラちゃん傘大丈夫?」
アプリンが窓に目をやりつつサマラビットに問う
「傘は確か玄関に置き傘が・・・てか、あぷちゃん出かけるの?」
つめを切りつつ、サマラビットが答える
「ううん。梅雨の季節、準備は万端かなーって」
特になんともなしにアプリン
「ああ、準備しないとね。もう私は準備万端v」
深く同意し、サマラビットは戸棚を空け、乾燥剤を取り出し、自慢げに
「ほら。特別製マクラだから安心して寝れるサ」
#26 見切発車 あぷラビ 備蓄
「腹減ったぁー・・・・」
ぐてー・・としているなるみ
時計は13時を指そうとしている
「お疲れ様です。」
今までなるみが作業をしていたのを見ていた後輩の川谷君が声をかける
「ありがとー。なんか食い物持ってきてくれるととてもうれしい気がするー」
椅子の背もたれに寄りかかりつつ川谷君に食料を要求するなるみ
「もう昼休み終わりですよ・・・」
川谷君の冷酷な一言
「・・・・・・・ぅぁ」
#27 見切発車 あぷラビ 終わりなき戦い
「君は、戦争についてどのような意見をお持ちかな?」
犬のドギーさんがサマラビットに話しかける
「それは・・・ずいぶんとアバウトな質問ダネ」
唐突な問いに戸惑いつつサマラビット
「それじゃ、対象を絞ろう。台所解放軍コックローチ戦隊と住居正規ゴキジェッタ軍との戦争についてだ」
顎に手をやりつつ、犬のドギーさん
「うぉ・・・・・」
頭を抱えつつ、サマラビット
「君は、解放軍の権利保護を主張するかい?それとも、正規軍の味方をしてコックローチ人種の絶滅政策を支持するかい?」
少し、意地悪な笑みを浮かべつつ犬のドギーさん
「コックローチ人種の絶滅と、拠点である台所に対する空爆の許可を・・・そして真の解放と衛生を手に入れるべきだと――」
ふと、いったん区切り、サマラビット
「解放軍の権利保護を主張しているのって何処の人たちなんですか・・」
#28 見切発車 あぷラビ 罠の罠
「食料保管庫はあそこだな・・・」
暗視ゴーグルを片手にルード隊長はつぶやく
「ルード隊長!ようやく食料にありつけますね!」
部下のペギーが興奮気味に語る
「奴らは二重、三重の罠を仕掛け、われわれを襲うのだ。気をつけよペギー」
重い口調で忠告するルード隊長
「あっ!罠です!」
と、足元にあるマットを指差すペギー
「これを踏んではなりません!こうやって・・・こうして回避すれば・・・!!」
ペギーがマットの上を飛び、奥側に飛び込む
「うぁ!隊長助けて何これねばねばしてる!」
暗闇の奥。ペギーの悲痛な叫びがこだまする
「これだから若者は・・・」
悲しいまなざしを向け、ルード隊長
「ちゃんとこのマットで足の油分を取ってから渡ればよいのだよ」
#29 見切発車 あぷラビ 煙幕
「ひまだなぁ・・・」
クーラーの効いたいつもの部屋、サマラビットがのんびりぼやく
「ごふっ・・・」
咳き込むアプリン
「!・・・・大丈夫あぷちゃん!」
駆けつけるサマラビット
「大丈夫だよサマラちゃん・・ちょっとのどの調子が悪いだけだとおもう・・」
つらそうに2、3度せきをこみつつ、アプリン
「そっか・・・ならいいんだけど」
と、興味をなくしそのままごろんと横になり雑誌を読み始めるサマラビット
そしてまたアプリンのせきの音が
「ねぇ・・・・クーラーつけてるのに蚊取り線香なんでついてるの・・?」
アプリンが気づく
「何でって・・・窓開けてたら煙が奥まで浸透しないじゃないか」
#30 見切発車 あぷラビ むしろ、むせる
「――なるみなにしてるの?」
不審気になるみに近寄ってくるさつき。
「何って・・・・豚味噌丼食べてるよ。」
特に関心がない様子でタバスコを振り掛けつつさつきの問いに答えるなるみ。
「いや、さすがにタバスコかけすぎだと思う・・」
ちょっとおびえつつ、さつきが言う。
「ん? ああ、でもタバスコって酸っぱいばっかりであんまり辛くないからたくさんかけても平気さ――」
軽く一笑し、なるみは箸に持ち代える
「そいじゃ、お先にいただきまーv」
「げふっ」
#31 見切発車 あぷラビ ペギーの思想事情
「ペギーよ。君は母の愛を信じているかい?」
ルード隊長が部下のペギーに問う
「はい。大いなる母は我々にさまざまな英知を授けてくれます」
ペギーが真面目に答える
「君はまだ若いのに素晴らしいな・・・で、どんな英知を授けてくれるのだい?」
ルード隊長が驚き、少々からかい口調でペギーに問う
「最近学んだことは―――"母よ。怠惰せよ"です」
「・・・・・怠惰?」
おうむ返しに問うルード隊長
「はい」
物腰静かな口調でペギーが答える
「"彼女"の怠惰が我々の慈悲として還元され、節操が我々を地獄の淵へと追いやるのです」
※大いなる母→人間
#32 見切発車 あぷラビ 派遣
「我々は絶えず学び、そしてそれを活用しなければならない」
ルード隊長が粉砂糖を齧りつきつつ語る
「そして、留学生を派遣し、他界の技術を習得するべきなのだ!」
食べながらしゃべり、ルード隊長は熱がこもっていく
「何処に留学生を送ればよいでしょうか?」
ルード隊長とは対照的に冷めた面持ちで粉砂糖を上品に口に運びつつ、ペギーが問う
「うむ。そうだな―――我々に食物を捧げてくれる大いなる母から更なる英知を得るべく留学生を派遣しようではないか」
後日
「彼らはどうなったであろうか?」
ルード隊長がペギーに尋ねる
「・・・・・・・・」
むすっとした様子でペギーは遠くの入り口を見つめルード隊長の問いに答えることはなかった
#33 見切発車 あぷラビ Mr.PJ
「先生。どうしたらよいでしょうか・・・」
アヒルのピージェーさんが重い口調で犬のドギーさんに問いかける
「そうですねぇ・・・それはとても興味深く――難しい問題です」
静かにまぶたを閉じ、考え込む犬のドギーさん
「もう、ストレスと慢性的な疲労で・・・・・」
思い出したかのようにげっそりと、そして力なくうなだれるピージェーさん
「とにかく・・・・・しばらくは安静な状態で休養を取ることが大切でしょう・・・出来ることなら」
ドギーさんが珍しく自信なさげに答える
「それは・・・・不可能ですよ」
ピージェーさんが力なく笑う
「あー!パパお帰りー!」
「あら。あなたお帰りなさい。ご飯出来てるわよ。一緒に食べましょ」
息子と妻が迎えてくれる
「・・・・・・ああ。」
#34 見切発車 過去ラビ れっつらごー
『合格祈願』
壁にかけられた額縁にはそう書かれていた。
「頑張ってあの、東橋大にいくんだ!」
祐一が意気込んで語った。
「祐一君頑張ってるね。私はどうしようかなー・・」
なるみが鞄を抱えつつ、遠くを見つめる
「行かないかい?一緒にさ」
祐一がなるみの視界をさえぎり話しかける
「・・んー・・・まぁ考えとくよw」
視界から祐一が見えなくなるように腰をひねりつつ答えるなるみ。
「まぁ・・・・・・・といいね」
「ん? なんていった?」
なるみに問いかける祐一
「なんでもないー。気にするなー! というか遅刻するぞ塾に。さぁれっつらごー!」
#35 見切発車 あぷラビ 冷蔵庫の中の考古学的価値
「この巨大な貯蔵庫には考古学的価値のある遺跡が残っているという。」
ルード隊長がそびえたつ壮大な建造物を目前にし相棒のペギーに語りかける
「しかしルード隊長。我々はどうやってこの貯蔵庫に侵入すればよいでしょうか?」
あくまでも冷静に尋ねてくるペギー
「この遺跡の入り口はとある決まった周期で開閉するのだ。そして、次回の開門の時はもうすぐと計算が出たのだ」
ニヤリと不適に笑い、ルード隊長が貯蔵庫の前まで歩き出す
「これも"大いなる母"の恵みなのですか?」
ペギーが表情ひとつ変えずに問う
「ああ。"大いなる母"は偉大であるっ!!」
ルード隊長は大きな声で叫ぶ
ドッ・・・ドッ・・ドッ・・・・
ガジャッ
突然地響きと共に巨大な爆音が起こる。それと共にまぶしい金色の光があたりを照らす
「時は満ちたり! 失われた遺跡を探すぞペギー!!・・・・・・・ペギー・・・?」
ルード隊長が振り向くと、ペギーは姿かたちもない
バシッ
「あぁ・・・ルード隊長お元気で・・・」
物陰に隠れつつ、ペギーは一人呟いた
#36 見切発車 あぷラビ 手首
「まったく・・・なるみったら全然ロッカー片付けてないじゃないの!」
さつきが両手を腰にし、ひとり文句を言う
「押し込まないで、ちゃんと畳みなさいよー・・そうじゃないと入らないじゃないか」
なるみのロッカーから冬物のコートを引っ張り出し、広げる
「・・・・ん?」
ポケットが何か膨らんでいる。興味がわいてくるさつき
「うぁぁぁ! なにこれ手首が出てきた!!」
#37 見切発車 あぷラビ ナツマツリ
「いいな・・・今日は祭りなんだぁ」
浴衣姿の女の人を見かけ、少し感慨にふけるなるみ
「祭り行きたいけど一人で行くのはむなしいし相手いないし仕事あるし暑いしなぁ・・・」
電車の改札付近。人ごみの山に流れごみの一部となりつつなるみがぼやく
「あれ?さつきは? 今日持って来いっていった企画書受け取りたいんだけど・・」
なるみがとりあえず――身近にいた後輩の川谷君に尋ねる
「先ほど帰りました。浴衣に着替えて」
#38 見切発車 あぷラビ 仕事
「ねぇ、聞いた?どうも来月にも新人さんがウチの部署に配属されるらしいよ」
さつきがかばんの中から小さな巾着袋を取り出しつつなるみに話す
「へぇー・・・・・また一人後輩が増えることになるね」
珍しく関心を示すなるみ
「ようやく忙しさから解放されるってわけね!」
笑いつつさつきが言う
「え?」
驚いた様子でなるみが目を見開く
「さつき、あなた働いてたの?」
#39 見切発車 あぷラビ ご飯をくれる人
「最近、ずいぶんと静かではないか」
ルード隊長があたりを見回し、つぶやく
「どうも、"大いなる母"が居なくなってしまったようですね」
冷静に、ペギーが答える
「・・・・なんだと!我らの"母"にそんなことが――あってたまるか・・」
対照的に、体を震えさせつつルード隊長が叫ぶ
「されどご安心を」
ペギーが冷静になだめる口調で
「"大いなる母"が授けてくれた食料は十二分に確保されております。尽きることはまずありえません」
その答えにしばらく沈黙するルード隊長
「――なら別にいいか」
#40 見切発車 あぷラビ 燃えてますよ
「そういえば、火事が起きたときってサマラちゃんどうすればいいの?」
アプリンがサマラビットに話しかける。
サマラビットは床で"一人暮らし節約革命"という雑誌をぱらぱら見つつ
「頑張って火元を消すんだ。そうしないと消えないじゃないか」
さも当たり前のようにあっさりと答えるサマラビット
「でもさでもさ!火に近づいたら熱いし煙でやられちゃうんだよ!」
手をパタパタさせつつ反論するアプリン
「ぇー・・・・」
困惑した様子でサマラビット
「それじゃ、遠くで火を眺めようか。アプちゃん」
雑誌を使い、煙を仰ぎつつサマラビットが答える
「うん」